「それは『チロ』。美月ちゃん、微妙に外してくるのはわざと?」

悟くんは苦笑した。


「わたしは、いつでも真剣です」


そうだよね


美月は誰もが振り返るような美少女で、頭もいいのに、どこかズレている。


「皆さん、お茶はいかが?」

開いたドアから、悟くんのお母さんが顔を出した。


「僕がやるよ。貸して」

悟くんがサッと立ち上がって、お母さんからトレーを受け取った。


ティーポットの紅茶に、お手製のパウンドケーキが添えられている。


「あら! 可愛いわね」

悟くんのお母さんは、サークルの中を覗き込んで言った。

「要の所から貰って来たんですって?」


「はい」


「いいわね。わたしも一匹探してもらおうかしら」


「五人も子供がいるのに、まだペットの世話なんてしたいの?」

悟くんが紅茶を注ぎながら言う。