そんなの分かってる。


「もう帰りたい」


ポツンと言うと、圭吾さんの顔が心配そうに変わった。


「どこか具合悪い?」


ああダメ

笑わなきゃ


「あのね、動物を飼うって責任重大だから、よく考えたいの。いいかな?」


「それはいいけど……」


「圭吾、ちょっと」


要さんが圭吾さんの腕を引っ張って、少し離れた場所で話し始めた。

圭吾さんが頷いている。


わたしはぼんやりと辺りを見渡した。


あそこに一本だけある木――桜かな?

遅咲きの木なのか、花がついているようでもない。


「志鶴」

圭吾さんがわたしを呼んだ。


なぁに?