「あ、それはこちらに下さる?」


彩名さんが声をかけると、子供達は耳まで真っ赤になりながら、指定された場所にクーラーボックスを運んだ。


「松子さん、子供達にいい影響を与えたいなら、あのくらい上品な言葉遣いをしなきゃ」

巧さんがからかうように言う。


松子さんは鼻を鳴らした。


「生き物にはね『素養』ってもんがあるんだよ。桜の木に梅は咲かないのさ。梅は梅らしく咲く方が綺麗だよ」


「だけどさ、いいところを見習うのも大切じゃない?」


アイちゃんがそう言うと、松子さんは愛おしむようにアイちゃんの頭を撫でた。


「その通りだよ。彩名はね、誰に対しても優しいんだ。そういう所を見習いな。けど、彩名になる必要はない。アイはアイで素晴らしいんだから」


アイちゃんは恥ずかしそうに笑うと、要さんの所に行った。


「要ちゃん、今の聞いた?! 

「ああ、聞いたよ」

「あたし、すごい?」

「うん。滅多に褒めない松子さんが褒めたくらいだ。すごいよ」

「もっと頑張るからね。アイが大人になるまで待っててね」