パクンと、小気味いい音がした。


「いっってぇ」

巧さんが頭を押さえた。


「子供に下らない嘘を教えるんじゃない」

松子さんが手の平を振りながら言った。

「とんだ石頭だね、巧。こっちの手の方が痛いわ」


松子さん、その『子供』にわたしは入ってないでしょうね。


「ちょっとした冗談じゃないか」

巧さんは文句を言った。

「だいたいね、高校の校長とお巡りが参加する花見だよ? 学校行事くらい品行方正なんだから、冗談くらい大目に見てくれよ」


「その校長センセはどうしたの?」

悟くんが聞いた。


「美月を拾ってから来るって言ってたよ」

と、大輔くん。


「それに、俺が頼んだ物を受け取りに寄ってから来るんだ」

要さんが言った。


「松子オババ、これどこに置けばいい?」

ペットシェルターの手伝いをしている子達が、キャスター付きの大きなクーラーボックスを引きずって来た。