もう一度咲きたい。

人が賑やかに集まるのを見たい。

枝を見上げて綺麗だと微笑む顔が見たい。


小さな、ささやかな願い……


「やっぱり、あの木を切らなきゃダメ?」


わたしの言葉に圭吾さんが頷く。


「黙っていればあと二、三年はもったのだろうが、命がこんなに欠けてしまったのでは……」


そうだ!


「お花見しましょ」


六つの目がわたしを見た。


「切ってしまう前に。花はなくたっていいじゃない。みんなを集めて、あの木の下でお花見しましょ」


みんなでお弁当を広げて、

おしゃべりして、

笑って、

そうして枯れゆく木に別れを告げよう。


「いいね」

悟くんが言った。

「風流じゃない。なあ、圭吾?」


「ああ。そうだな。三百年は生きてきた木だ。それくらいの見送りが相応しいのかもしれない」