「もう!」


和子さんがふふふと笑った。

「きっと遊んでいるつもりなのですよ」


「やっぱりビシッとしつけなきゃダメなのね」


わたしがそう言った途端、和子さんと悟くんが吹き出した。


何よ?


「いや、別に」

悟くんが笑いを堪えながら言った。


分かってるわよ。

わたしには出来ないと思ってるんでしょう?

ふん

子犬くらい、しつけられるんだから。


曲がり角を曲がると、ずっと先でペロが何かにじゃれついているのが見えた。

何か布の塊のようだ。


「ペロ、おいで」


体を少し屈めて手を差し出すと、今度こそペロはわたしに向かって走り寄って来る。


どこからかその時、フワッと香りが漂った。


「悟くん、桜の匂いがする」