「あ、でも……」


「でも、何?」

圭吾さんと悟くんが同時に聞いた。


「あの時――」

しまった。美幸に『何にでも同情しちゃダメ』って言われてたのに……

「一本だけで寂しくないのかなって考えたの。花が咲いたら、誰か見に来てくれるといいなって」


「くそっ、それだ!」

圭吾さんが吐き捨てるように言った。


「この間の寄り合いで、切らない事に決めた桜だね?」


悟くんがそう確かめると、圭吾さんはジロッと見返した。


「会合に出ていない未成年のお前が、何故知っている?」


「やだなぁ。僕を誰だと思ってんの? 僕の耳に入らない事なんてないよ」


「そのようだな――要は?」


「今日は出番だよ。今の時間ならデスクワーク中だね」


「兄貴のスケジュールまで把握してるのか?」

圭吾さんが呆れたように聞く。