「志鶴ちゃん、この人は田辺松子(たなべ まつこ)さん。この施設の持ち主で、俺達の大叔母にあたる」


「はじめまして。三田志鶴です」

わたしは慌てて頭を下げた。


「はいよ。さすが貴子さんだね。躾が行き届いて上品なもんだ。圭吾はどうした? あんたの後ろを、馬鹿みたいにくっついて歩いてるって聞いたんだけどね」


わたしは耐え切れずに吹き出した。


「け、圭吾さんなら外の車のところに」


やだ。声が震える。


「しょうがない子だね。男の子ときたら、どいつもこいつも図体ばかりでかくて、肝っ玉が小さいんだから」


「こき下ろすのは、それくらいにして」

要さんが苦笑した。

「志鶴ちゃんは、里親になるかどうか決めに来たんだから」


「早くそれをお言い! 小さいのがいいんだよね? それとも猫かい?」


えっ?! うわっ!


松子さんは要さんからわたしをひっさらうと、プレハブ小屋へと引きずるように連れて行ったのだった。