もうこんな事はこれっきりにしよう。


一人になったわたしは、そう決心した。


わたしは圭吾さんを支えるような人になりたいんだから、

圭吾さんに心配かけて、こんな手間をかけさせて、大切にされている事を確かめるなんてダメだ。

優月さんは圭吾さんの思い出だもの、ちょっとくらい優しい顔になっても我慢しなきゃ。


ポケットからティッシュを取り出して、涙を拭いて鼻をかむ。


あー、カッコ悪っ


すっきりした鼻をついて、あの桜の匂いがした。


ドキリとした。

目を上げるのが怖い。

圭吾さん、早く戻って来て。


俯いたわたしの視界に、黒いモノが飛び込んで来た。


うわっ!


黒髪の女の子が、わたしを不思議そうに見ていた。

小学生くらいだろうか。

整った綺麗な顔立ちの子だ。