「ああ、優月」


圭吾さんのバカ。

そんな優しい声で他の人の名前を呼ばないで。

いつもの不機嫌な圭吾さんはどこに行ったのよ。


「志鶴が怪我をしたんだ」


そうよ。足が痛いわよ。

機嫌も悪いわ。

優月さんにデレッとしたら、承知しないんだから!


「学校で階段を踏み外しただけじゃない。レントゲンとか大袈裟!」

わたしはムスッとして言った。


「骨にヒビが入ってるかもしれないよ」


「軽い捻挫だろうって保健室の先生も言ってていたじゃない」


「軽い、なんて言ってなかったよ。それに、『だろう』じゃ困るんだよ」


「じゃ、湿布だけもらって帰ろ?」


「志鶴――」


圭吾さんは、助けを求めるように優月さんの方を見た。


「本人が嫌がっているなら、仕方ないんじゃないかしら?」


優月さんはちょっと考えてから、そう言った。