思えば、あの日以来だ。 穂波が嫌がることをしたのはあれが初めて。 泣かせるつもりも困らせるつもりもなかった。 でも、蓮とのことを薄々気づいて、焦った。 穂波は俺の女だ。 その核心が欲しかった。 証しが欲しかった。 「このまえは、ごめん。」 その言葉に外を見たまま小さく反応した穂波。 「ごめん…。」 窓から入ってきた風が彼女の髪をなびかせる。