こんなに優しくしてもらった
人の名前も知らない私。
せめてひとつだけでも何か知りたい。
「いや、今はまだ教えない。
また会いにくるよ、由梨亜ちゃん♪」
なんで、私の名前……?
「じゃ、俺行くから」
「待って……!」
反射的に制服の裾を引っ張ってしまった。
「ん?」
「…えっと、また…会える…?」
何、柄にもないこと言ってるの?
こんなの私じゃない―!!
「やっぱり、なんでもない!!
ありがとう!!さようなら!!」
恥ずかしくて手を離した。
「ふっ…また会いに来るから。
また、な」
そう言って走って言ってしまった。
「また、ね……」
小さくつぶやいて私も家路を歩いた。

