時間にしたら、たぶん2分に満たないくらい。


でも、私にしたら十分永遠に感じられるくらいの、長い長いその時間。




琉威は、やっと口を開いて喋りだした。



「…遊紀ぃ…」


まるで子供に戻ったような、妙に甘ったるい声で、琉威は私の耳元で囁くように言った。


変に色気を含んだその声に、私の背筋がぞわっと熱く震えるのを感じる。


「ど、したの」


明らかに動揺を隠しきれてない私の声に、琉威はふっと笑みをもらした。


「遊紀、照れてんの?」


「照れ…?!/// んんんなわかないじゃん!」


「嘘。 ドモりまくってっし」


「嘘じゃないよ!」


私の肩をわざとらしくくすぐりながら、琉威は楽しそうに言葉を紡ぐ。


「くすぐったい! 触んないでよ」


「ははっ。 知らねぇよ」


その表情は、心から楽しいと感じてる、
心からの笑顔に見えて。


さっきまでの震えてた琉威はどこにいったんだか。


可愛かったし、ずっとあのままでいればいいのに。


なに、急に余裕ぶっこいちゃってんのよ。


なんて、ちょっと悔しくて心の中で悪態をついてみる。



だいたい、普段の琉威だと、こうゆうとき余裕がなくなるんだ。


妙に勝ち気だし、強気だし、いじわるだし、やな奴だし…


…けど、嫌いになれない…


なんて嘘嘘!!

大嫌いだよ! 何言ってんの私!


心の中で、勝手に自問自答して照れてしまう。


だから私は素直になれないんだ。


こっちこそ本音じゃないって、自分が一番わかってるのに。


本当は、いつもの琉威に戻って嬉しいのにな。


私は単純だから、ただ琉威がいつものようにおっきな笑顔を見せてくれただけで嬉しくてたまらないのにな。


…悔しいからそんなこと、絶対言ってあげないけど。




まだ、琉威の腕は私を包んだまま。


あったかい温もりと、心地いい鼓動と、落ち着く匂いと


全部私を包んだまんま。