「…っ!」
ふいに、琉威の私を抱きしめる力が強くなった。
「――琉、威?」
痛いくらいに、私をすっぽりと包むその腕が、小刻みに震えながら、私を抱きしめてる。
急に…
どうしたの?
琉威、なに震えてるの?
どうして? 悲しいの? 苦しいの?
どうして放してくれないの?
なんで…そんな力強く抱きしめるの…?
疑問がふわふわと頭に浮かんでくる。
なにを考えても、私の中で答えは出ない。
私の頭はふわふわしてて、きっと使い物にならない。
私には、あなたのこの腕の震えを押さえる術がわからないから…。
必死に琉威の背中に腕を回し、肩に顔を埋める。
大丈夫、私はここにいるからね。
そう、訴えかけるように。
だから、どうかいつもの元気な琉威になってください。
そう、願いながら。
ちゃんと好きだから。
私は逃げないから。
ずっと傍にいてあげる。 それは私の望みでもあるから。
琉威が望むなら、ずっとあなたの腕の中だってかまわまい。
「琉威…好きだから……」
安心して…って言うのはおかしいのかな?
告白の答えをもらったわけでもないんだし…。
…けど
「琉威、苦しいよ…」
少しはにかみながら、私は琉威の髪に指をからめた。
なんて言っても、琉威の私を抱きしめる腕は緩まらない。
目の前に広がるのは、相変わらずの夕焼け空と、琉威の髪の毛。
目をつぶっても、感じるのはきつい腕の感触と、琉威の匂いと、二人の鼓動と…。
…この腕の強さが答えだって思うのは、ちょっと自信過剰かな。
琉威は呆れてしまうかな。
…でも、せめて祈らせてください。
どうか、私を好きになって
私を見てください


