大空へ






それから私たちは、陸上部への入部手続きを済ませた。



「じゃあ、ふたりとも今日から正式に陸上部だ。 よろしくな」


私たちの前には、がっしりとした体格で大柄な男の先生。


「俺は陸上部顧問の狩眞だ。 ビシビシ行くから覚悟しとけよ」


どうやら顧問の先生のようだ。


なんだか厳しくて有名な先生らしく…

『鬼の狩眞』と悪名を聞きつけていたため少し不安だったんだけど


狩眞先生はにかっと白い健康的な歯を見せて笑った。


とっつきやすそうな先生ではあるみたい。



「はいっ! よろしくお願いしま~す!」


そんな先生に安堵したのか、くだけた様子で隣の琉威が挨拶をする。


ワンテンポ遅れて私も「よろしくお願いします」と頭をさげた。



「よしよし。 礼儀をわきまえてるな」


そう言って、先生は私たちの頭をぐしゃぐしゃと引っ掻き回す。


さっきやっと整えた琉威の髪が、また残念に跳ね上がる。



「ちょっ! やめろって!」


慌てて先生の太くて丈夫そうな腕を掴むが、


「わはははは」


先生は更に楽しそうに琉威の頭を撫で回す。


そんな微笑ましい光景に、私はついつい吹き出すと


「なに笑ってんだっつーの」


「わぁっ! ちょっとやめてよ!」


悔しそうに琉威が私の髪をかき回す



楽しい

琉威が笑って

先生も楽しそう

私も楽しい



琉威の私より大きな手が、ぐりぐりと私の頭を乱暴に撫でて


そんな琉威に怒る態度を見せながらも、私の顔から笑顔が絶えない。



あぁ、好きだなぁ


この瞬間、この感覚

この幸せなカンジ。


走ってるときに似てるなぁ。



そして私は、走りたくなって



「ねぇ琉威! グラウンドまで競争しない?」


琉威の腕を引くんだ。


「おうっ! 望むところだ!」



そして私たちは


走り出すんだ。



「こらっ! 転ぶなよ~」


背中から先生の大きな声が聞こえるけど、構わない。


私たちは笑いあって

手を取り合って



いつも同じ場所へ