『なんで? なんで? なんで? だって、原稿用紙十枚だよ。良ちゃんなら楽勝でしょ? いつもはもっと長い話、書いてんじゃんっ』
喚く英吾に良太郎は顔をしかめるしかなかった。
-どんな感じ?
外出の用意をしていたところに、進捗具合を確認する英吾からの電話が入った。
『全然、全く書けねえ』
良太郎は鼻の頭を掻きながら、申し訳なさそうな声で、正直に事実を告げた。
とたん、悲鳴にも近いとびきり盛大な吃驚声が、受話器の向こうからあがった。
なんで、なんでを繰り返し、そのまま家に押しかけてきそうな勢いの英吾に、良太郎は心配するなと告げて電話を一方的に切ると、そのまま携帯電話の電源も落として、逃げ出すように家を飛び出し、ここに来たのだ。
「どういうジャンルにするかくらいは、決まってんだろ?」
聡は良太郎の珈琲淹れ始めながら、淡々とした声で、そう良太郎に問いかけた。
漂う香りに、良太郎の頬は緩んでいく。
「夏海さんは、恋愛小説がいいかなって」
「へえ」
「あの雑誌、女性がターゲットにしてるから、女性が好むもながいいってね」
「なるほどな」
「主人公も女性のほうがいいんじゃないかって」
「へえ」
気の抜けた声で相槌を繰り返し聡に、良太郎も淡々と話し続けた。
喚く英吾に良太郎は顔をしかめるしかなかった。
-どんな感じ?
外出の用意をしていたところに、進捗具合を確認する英吾からの電話が入った。
『全然、全く書けねえ』
良太郎は鼻の頭を掻きながら、申し訳なさそうな声で、正直に事実を告げた。
とたん、悲鳴にも近いとびきり盛大な吃驚声が、受話器の向こうからあがった。
なんで、なんでを繰り返し、そのまま家に押しかけてきそうな勢いの英吾に、良太郎は心配するなと告げて電話を一方的に切ると、そのまま携帯電話の電源も落として、逃げ出すように家を飛び出し、ここに来たのだ。
「どういうジャンルにするかくらいは、決まってんだろ?」
聡は良太郎の珈琲淹れ始めながら、淡々とした声で、そう良太郎に問いかけた。
漂う香りに、良太郎の頬は緩んでいく。
「夏海さんは、恋愛小説がいいかなって」
「へえ」
「あの雑誌、女性がターゲットにしてるから、女性が好むもながいいってね」
「なるほどな」
「主人公も女性のほうがいいんじゃないかって」
「へえ」
気の抜けた声で相槌を繰り返し聡に、良太郎も淡々と話し続けた。


