焼け木杭に火はつくか?

喋らない聡は、やや愛想のない無骨な雰囲気がある。
感情が顔に出やすい良太郎や英吾と違い、聡は子どものころからあまり感情が顔に出ることがない。
具合が悪いときですら、誰にも気づかせず、一人で堪えて耐えてしまうようなところがあった。
口数も少なく、笑うこともあまりないときの聡は、まるで無表情の能面が張り付いたような顔になってしまうのだ。
それはサービス業においては、決してプラス効果にはならない。
物静かな雰囲気を好む客もいるだろうが、寡黙と無愛想は全くの別物だ。


笑顔で。
挨拶の一つくらいは。
できているのだろうか。
それとも。
愛想のいい店員でも。
雇っているのか。


微かな不安に、念のためにと英吾に恐る恐る尋ねてみると、他に従業員はなく聡が一人で切り盛りしているよと呑気な声で回答があった。
一抹の不安と、たっぷりの好奇心を丸出しにして、良太郎がようやく聡の店を訪ねたのは、帰郷を決めたその日のことだった。