英吾からそれを聞かされた良太郎は、サトルくんらしいなと、顔を綻ばせた。
聡の料理の腕前なら、既に知っている。
あれだけの料理を作ることを考えれば、それは実に聡らしい選択だと良太郎には思えた。

無口な大人しい子。

昔から、聡のことをそう言う大人は多かった。
道代や信二ですら、そう思っていた時期があるらしい。
確かに、普段の聡は決して口数が多いほうではない。
幼稚園の先生など「おはようございます」と「さようなら」の言葉しか聞かなかったという日があるかもしれない。
しかし、スイッチが入ると驚くほどよく喋る子どもだった。
良太郎や英吾は、それを知っていた。
昼寝が好きで、幼稚園などでも気がつくと部屋の隅で丸まって寝ていることが多かった。
起きていても、その顔はいつも眠そうだった。
その印象が余りにも強いのだろう。
あまり活発な子どもとは、大人たちには思われなかったようだ。
でも、いざ腰を上げて動き始めた聡は、英吾すら霞んでしまうほど活動的だった。