良太郎に読書の楽しみを教えてくれた源次郎は、病の床にあっても最期まで、その傍らに良太郎の本を置いていた。
良太郎が文壇デビューを果たす少し前、源次郎の体を蝕む癌が見つかった。
病巣は摘出するには難しい場所にあり、源次郎自信も手術を望まず通院しながらできる治療を受けていた。
良太郎の処女作が世に出たのはそんなころだった。
誰よりも、良太郎が小説家になったことを喜び、誇りに思ってくれたのは、源次郎だったのかもしれない。
「そーいや。祖父ちゃんの家、結局どーすることにしたの?」
源次郎の家は良太郎の家の隣にあった。
正確に言うと、遊歩道を挟んでの右隣だ。
結婚したばかりのころは、社宅暮らしをしていた信二と道代だったが、道代の妊娠が判ったとき、売りに出ている隣の土地でよければ買ってやるぞと、源次郎が言い出したらしい。
信二にも、いずれはマイホームをという気持ちがあったこともあり、源次郎のその好意に甘えることにしたのだという。
その話が出たとき、道代は源次郎との同居を申し出たらしい。わざわざ家を建てなくても、一緒に暮らしましょうと。
しかし、源次郎が別居を選んだという。
良太郎が文壇デビューを果たす少し前、源次郎の体を蝕む癌が見つかった。
病巣は摘出するには難しい場所にあり、源次郎自信も手術を望まず通院しながらできる治療を受けていた。
良太郎の処女作が世に出たのはそんなころだった。
誰よりも、良太郎が小説家になったことを喜び、誇りに思ってくれたのは、源次郎だったのかもしれない。
「そーいや。祖父ちゃんの家、結局どーすることにしたの?」
源次郎の家は良太郎の家の隣にあった。
正確に言うと、遊歩道を挟んでの右隣だ。
結婚したばかりのころは、社宅暮らしをしていた信二と道代だったが、道代の妊娠が判ったとき、売りに出ている隣の土地でよければ買ってやるぞと、源次郎が言い出したらしい。
信二にも、いずれはマイホームをという気持ちがあったこともあり、源次郎のその好意に甘えることにしたのだという。
その話が出たとき、道代は源次郎との同居を申し出たらしい。わざわざ家を建てなくても、一緒に暮らしましょうと。
しかし、源次郎が別居を選んだという。


