「三島良太郎の短編下手あんど苦手意識、それを克服するいい修行になるんじゃない。苦手よね、短編とか、掌編とか。一応、これでも期待してんのよ、三島良太郎に。胸借してあげるから、ここらでどーっんと修行しちゃいなさいって」

夏海のその言葉に、良太郎は渋々ながらも頷くしかなかった。
原稿用紙にして五十枚になるかならないかの、短編と分類される小説が、良太郎は苦手だった。
編集者や、付き合いのある同業者にも不思議がられるほどに、筆が進まない。どうにもこうにも、書きたいことがうまくまとまらないのだ。
今の連載も、毎月、書き上げているのは、原稿用紙三十枚前後のものだが、感覚的には長編をぶつ切りにして出しているというのが正解だった。
そんな自分に、よりにもよって掌編の依頼など、どう考えても夏海の差し金だろうと思っていた。


どうして。
英吾はこんなことを。
思いついたのだろう。


そんな好奇心が、頭を擡げてきた。