そして、久しぶりのその笑顔にうっかり見とれてしまった結果、良太郎は夏海を警戒することも忘れ、夏海と向かい合うようにソファーに腰を下ろした。

「西島が迷惑かけたわね。彼、酔うけど底なしだから、付き合う人はいつも後がひどいのよね」

コロコロと笑いながらのその言葉に、良太郎は苦笑いを浮かべた。

「俺もあいつとじっくり飲むの、久しぶりだったんで、あいつが底なしバケツだったことを忘れてましたよ」

胃を押さえて顔をしかめる良太郎に、夏海はまた笑った。

「会社で、良ちゃんに飲ませすぎたって反省していたわ。迷惑かけちゃったなあって」
「いや。大丈夫。飲ませすぎは本当ですけど、迷惑はかかってないです」

手を振って大丈夫を繰り返し良太郎に、夏海はこれでもかというくらい艶やかな笑みを浮かべた。

「ならいいんだけど。執筆依頼、本当に迷惑じゃなかったのね。よかったわ」

そう言って、楽しそうに笑う夏海に、良太郎は思わずソファーからずり落ちそうになりながら、天を仰いだ。


そっちかよ。
いや。
この人はこういう人だ。


相変わらずの夏海に、良太郎は思わず呻いた。