どこから聞き及んだのか、その企画を知った野口から「せっかくの機会じゃないですか。本の宣伝にもなりますから」と強く説き伏せられたのだった。
埒の明かない良太郎に業を煮やして、野口を炊きつけたのは夏海だったということを後から聞かさた良太郎は、夏海の相変わらずの押しの強さにただ苦笑いをするしかなかった。
それでも応じなかったらどうするつもりだったのだろうと、インタビュー記事が掲載された雑誌を送ってもらった礼を言うため電話を入れた良太郎が夏海にそれを尋ねると、夏海はさらりと言いのけた。


－次はおばさんに泣きついて、それでもダメなら、仕方ないから良太郎のオールヌードの写真と、おねしょした布団の前でびーびー泣いている写真使って脅かしたわよ


その言葉に、良太郎はもはや笑い出すしかなかった。

そんなことを思い返している良太郎のことなど気にも掛けずに、英吾は酔った口調のままで話を続けた。

「それでなんだけど。今度はさ、良ちゃんの小説、載せたいなあって」
「へえ……、あぁっ？！」

突然の話に、良太郎は目をばちくりとさせ英吾を見た。
自分に向けられた視線に気付いた英吾は、良太郎に向かい拝むように手を合わせた。