「でさ。十周年記念して、今年限定の企画物やろうと思ってんだよね」

良太郎からの頑張ったの言葉に、呆気ないくらい気を良くした英吾は、またへらりと笑いながら、機嫌のいい声で喋り始めた。

「へえ、いいんじゃね」

軽いノリで、良太郎はそれに相槌を打った。

「五周年のときは、インタビューだったじゃん」

英吾にそう言われ、良太郎はその当時のことを思い出した。

良太郎が小説家として世に出たその年は、英吾が入社した会社で作っているその地方情報誌が創刊して5周年を迎えるという節目のその年でもあった。
その記念にと、一年限定の特別企画を夏海は考えた。
それは郷土出身の著名人に限定してのインタビューを掲載をするというものだった。

企画事態は決して目新しい企画ではなかったが、夏海の会社で出している四十頁にも満たないような地方の情報誌で、四頁にも及ぶインタビュー記事を掲載するのはなかなかの冒険だったらしい。