良太郎たちが高校受験を迎えたころになると、休みの日に秋穂の部屋に上がりこんでは、皆、夏海に勉強を見てもらっていた。
特に英吾は、五教全て科赤点スレスレという成績で、良太郎と同じ高校を受験したいと担任に告げても、無駄金を使うようなものだから志望校を変えろと言われ落ち込んでいたのだが、夏休み中、夏海の組んだカリキュラムで勉強し続けた結果、休み明けには担任が驚くほどに成績を伸ばした。


-あの子がやる気になったときの集中力は半端ないし、ホントはすっごい努力家なんですよ。
-それを上手く勉強に向けさせただけですよ。


英吾の模擬試験の結果に驚いた道代が、いったい、どんな魔法を使ったのかと尋ねると、夏海は笑ってそう答えただけだという。
もちろん、良太郎もその恩恵に授かり、苦手教科だった数学が驚くほど成績を伸ばした。

そんな付き合いをしていただけに、大人になった今でも、英吾も良太郎も夏海に頭が上がらないなかった。