英吾にも、良太郎の両親のその愛情は伝わっていたのだろう。
良太郎が家を出てからというもの、良太郎の家で男手が必要になるとすぐに駆けつけて、手伝った。

信二が単身赴任で家を空けるようになってからは尚更に「おばさん。何か困ってことはない?」と、一人で家を守っていた道代を気に掛け、三日と空けず顔を見せていた。
時には、一緒に夕飯を取ることもあったらしい。
道代は、それが何より心強かったと、息子たちと一緒に飲みながら、何度も英吾に礼を言った。

「いやいや。俺のほうこそ、おばさんのお陰で、栄養満点のご飯食べられてるもん。俺がメタボにならないのは、おばさんのご飯のおかげだよ」

道代の言葉に笑いながらそう答え、英吾はもう少し肉つけたほうがいいんじゃないのかと、見ているほうは逆に心配になってしまうような、細い体のうすっぺらい腹部をペシペシと叩いてみせた。
痩せの大食いを地でいく英吾は、その健啖ぶりを知らない者が見たら驚くほど、とにかくよく食べる。
そのくせ、細い体だった。
食べ過ぎに気をつけないと、すぐにぽっちゃりとした体型になってしまう良太郎には、かなり羨ましい体だった。