良太郎と英吾の出会いは、十年以上前まで遡る。

英吾が三歳になったくらいのころ、英吾は父親と二人でこの団地に引っ越してきた。
どういった経緯で、良太郎の家族と英吾親子が親しくなったのかは定かではないが、英吾が引っ越してきたときから、互いの家を行き来するように間柄になっていた。

引っ越しを機に、英吾の父親はそれまで勤めていた建築設計会社を辞めて、独立したらしい。
それは、英吾のための選択だったのだろうということは、今ならば良太郎たちにも判った。

新居は自宅兼事務所となり、英吾の父親は、朝から晩まで仕事をしていた。
家屋などの建築物だけでなく、オーダーメードの家具の設計などもしていたらしい。
三島家のリビングボードなどは英吾の父親が設計して誂えてくれたのだと、道代がそう話していたことがあった。

機械と建築という違いはあったが、使っている製図用のソフトウェアなどはどちらも同じで、英吾の父親は機械設計の勉強をしていたこともあり、父親同士も話があったらしい。

とにかく、良太郎と英吾に物心がついたころから、家族ぐるみの付き合いをしていた。