焼け木杭に火はつくか?

「夏海さん、いくら折り紙つきの健康優良児でも、それは死んじまいますって」
「殺したところで、その単純なおバカは治らねーべ」

笑いながら夏海を止めに入る良太郎と聡に、夏海の指から開放された英吾は咳き込みながら涙目で反論した。

「ひどいよ、、何気に、失礼なこと言ったでしょ? それくらいは判るよ、オレも」

涙の浮かぶ目で恨めしげに二人を見ながら立ち上がった英吾は、一人、窓際のテーブル席にそそくそと移った。
携帯電話を耳にあてるその後ろ姿は、見て判るほど楽しそうにだった。

「秋ちゃん。おはよ。大ニュース。夏海さんと長谷さん、仲直りしたんだって。でね、長谷さん、今ね、団地の中でパン屋やってるだ。ホントだよ。今度の休みに見に来てよ。それで、サトルさんの店でみんなで話そ? ね?」
「あれ。何してると思う?」

もう立ち上がり怒る気力すらもなくした夏海が、うんざりとした息を吐き出しながら聡と良太郎に問いかけた。