「なんだよ、それっ　先に言ってよっ　社長っ」

クルリとスツールごと回って夏海に向き直った英吾は、夏海に口を開く間さへ与えぬ勢いで喚き散らした。

「だったら、さっさと、とっとと、結婚してよっ　そしたら、披露宴じゃん。秋ちゃん、こっちに帰ってくるじゃん。それでみんなハッピーじゃん。もうすぱっと長谷さんのとこに、お嫁に行ってっ」

夏海を見ながら、吠える子犬のように喚きたてる英吾を、夏海は「うるさいっ」と一喝する。

「アンタは、どうしてそう単純おバカなのっ　誤解が解けただけの話よっ　大体、とっとと結婚しろだ、嫁にいけだ、アンタは何様よっ」
「だって、ハグしてムギュすれば、めでたしめでたしでしょ。そのバカ力、こうゆうときに使って役立てなよ」
「怪力だの、バカ力だの、アンタって子は」

これでもくらえっと、夏海は英吾の首に両手の指を巻きつけ締め上げた。
キブ、キブ、ギブーっと英吾はカウンターをバジハシ叩く。