夏海は額に手を当て肩を落として深いため息を吐き、良太郎は椅子から転げ落ちそうなほどの勢いで笑い転げた。
英吾はそんな二人を交互に見て、なんのことか教えてよと、カウンターの中の聡に駄々を捏ねるように強請った。

「あけぼっくり？　メラメラ？　ってなに？　それ、なに？　なんの話？　ねえってば！　サトルさん！」

あけぼっくりってなにーっ
そう喚く英吾に「夜中に騒ぐなっ、近所迷惑だろ」と聡は言って英吾を黙らせる。

「あけぼっくりじゃなくてな、やけぼっくいな」

静かになった英吾に、まずはその聞き間違いを苦笑混じりに訂正しながら、聡は一人、話が見えず蚊帳の外に置かれている英吾に、ある出来事の顛末をざっくりと語り聞かせた。

「あのな。おメーが来る前、長谷さんもいたんだ、ここに」
「そうなの？」
「ん。でな、一応な、夏海さんとは和解が成立。喧嘩の原因だった誤解はちゃんと解けて仲直りしたよ」

聡の説明に目を見開き固まった英吾は、すぐに息を吹き返し、喚きだした。