「お前は秋穂の気持ちが最優先だから、秋穂が戻らないって言ってる間は、お前もずっと向こうに行ったままになるだろ」

そうだろうと確認する良太郎に、英吾は当然だというようにコクンと大きく頷いた。

「向こうで、お前がいくら何を言い聞かせても無駄だぞ。それじゃ、秋生の中にある夏海さんへの負い目みたいにもんは、なくならないんだ。とくかく、秋穂をここに連れてこい。それで、ちゃんと夏海さんは話しをさせろ。言いたかったこと、聞きたかったこと、全部、夏海さんに聞いてもらうんだ、言ってもらうんだ。それでも大阪での仕事を続けたい、戻れないって秋穂が言うなら、一緒に大阪行け。それなら、止めない。行け。でも、まずは、とにかく、秋穂を連れて来い」
「いいわよ。私が行くわよっ 行って連れ戻してやるっ」

立ち上がり今には出て行きそうに夏海を、聡の手が引きとめた。

「待て。夏海さん。それも、ちげーって」
「煩いっ 止めてもムダっ 秋穂のやつ。会ったらムギューって、苦しくなるくらいムギューって」
「ダメッ 社長の怪力で首絞められたら、秋ちゃん死んじゃうって。ダメッ」