「あの頃は、私もイライラしていた頃だったから、長谷のちょっとした言葉に、怒りだしちゃったのよ。女だけど、自分の仕事に対する誇りだって意地だってあるのよ。それを全部丸ごと、否定されたみたいに感じちゃったんだから、しょうがないでしょ。長谷だって悪いでしょ。肝心なとこで口下手なんだから」
「オイラだって、怒ってカリカリしてる夏海さんの前じゃ、ぜってー、喋れねえな」
「サトルくん。大丈夫。みんなそうだから」
「しばかれたいの、あんたたち。大体、聡はそんなしおらしい玉じゃないでしょうが」

また茶々を入れて混ぜっ返す聡と、それに便乗する良太郎を夏海はねめつけるように睨んだ。

「おー、コワっ」

くわばらくわばらと唱える聡に良太郎は笑った。

「それで、別れちゃったの？　社長と長谷さん」

三人の騒ぎをよそに、一人、神妙な面もちをしている英吾は、夏海にそう尋ねた。

「まあね。売り言葉に買い言葉の喧嘩が、いつの間にか収拾つかなくなっちゃってね。それで、別れることになっちゃったのよ」