焼け木杭に火はつくか？

『聡は、もう大人と同じだな。子どもでいることを許してもらえないから、大人になるしかないんだろう』

いつだったか。
何かの話の流れで、源次郎が信二たちに言った言葉が、ふいに良太郎の中に蘇った。
子どものときに聞いたその言葉は、今でもその意味はよく判らないが、こんな聡を見ると、確かに聡は自分よりも遥かに大人なんだと感じる。
聡は静かな店内で、訥々と喋り続けた。

「オイラでも、父ちゃんや母ちゃんのことを悪く言われりゃ、今だって傷つくよ。また親戚の人に、母ちゃん父ちゃんが責められたりしたら、秋穂ちゃんが、また傷つくべ」

その言葉に、夏海は顔を上げ聡を見た。

「だから、夏海さんは言うなって言った。秋穂ちゃんのためにやったことで、もっと秋穂ちゃんが傷ついたら、夏海さんも秋穂ちゃんも、誰も救われねーだろ」

いつもと変わらない飄々とした様子で、淡々とそう言葉を続けていく聡を、良太郎はまた複雑な面持ちで眺めていた。