焼け木杭に火はつくか？

「夏海さんは、なんだかんだいってもさ、親戚の人の間でも、優等生の人気者だろ。夏海さんに怒鳴られて腹を立てたとしても、それでも、夏海さんを悪く言うくらいなら、またおばちゃん悪者にするんじゃねえか？」

その言葉に、夏海はそうかもしれないと、唇を噛みしめた。
夏海にとっては、とても優しい叔父であり叔母であった。
母を早くに亡くしたこともあり、随分と可愛がってもらったと思っている。それだけに、夏海が慕っている育ての母親を、陰でそんなふうに責め立てていたことなど、思いもしなかった。
あの母のことだ。きっと、自分には気付かせないようにしていたのだろうと思うと、夏海は自分の不甲斐なさに腹を立てるしかなかった。
そんなふうに夏海に話しかけている聡を、良太郎は不思議な思いで眺めていた。
聡と夏海の距離感は、自分たちとは微妙に違う。自分や英吾では、こんなふうに夏海に言い諭すことは決してできない。
夏海とて、自分たちの言葉では耳を貸しはしないだろう。
子どもの頃の聡も自分たち同様、よく夏海に叱られていたけれど、自分たちと違って何かを相談されていることもよくあった。