小学校、中学校は距離にして三キロほど離れたところにあるが、高校は周辺にはない。
病院も、以前は団地の外れにあったのだが、今は数キロ離れた場所に移転している。
駅からも遠く、団地内にバス停はあるが、やってくるバスは一日数本という有様だった。
最寄りのスーパーマーケットも、歩いていける場所にはなく、もちろん、コンビニエンスストアーもない。
だから、この団地での生活には、交通手段になる自家用車やバイクが欠かせなかった。

そういった地の利の悪さもあって転居していく者も多いが、新しいものと古いものが絶妙なバランスで入り混じった団地の雰囲気に惹かれ、決して住みやすいとは言い難いこの地に望んで移り住んでくる者も後を絶たなかった。
そんな不可思議な雰囲気に包まれた、田園地帯に忽然と作られた団地で、良太郎は生まれ育った。

大学進学、或いは就職。
良太郎と同じように、そういったタイミングで、良太郎の幼馴染みたちの多くもこの団地を出て行ったが、今でも変わらず、この地に暮らす幼馴染たちも少なくはなかった。
良太郎のように、戻ってくる者もいる。