焼け木杭に火はつくか？

「夏海さん、中学卒業したら家から出ちゃったじゃん」
「そりゃ。バレーの強い高校に行くことにしたから。でも、家から通うのは無理だったから、寮に入ったのよ。それが何だって言うのよ？」

そんなこと知ってるでしょと不思議がる夏海に、英吾にしては珍しく、言葉を選ぶようにゆっくりと口を開いた。

「そのことでいろいろ、おじさんとおばさん、言われたりしてたんだ」

そう言って、英吾は秋穂から聞かされた言葉を、夏海に伝えた。

『夏海ちゃんが家を出たのは、あなたたちが秋穂ちゃんのことばかり大事にして、夏海ちゃんのこと邪魔にしたからじゃないの？』
『秋穂ちゃんがいるから、夏海ちゃん、この家に居づらくなってのかもしれないわ』
『前の奥さんの子どもだからって、苛めたりしてないでしょうね』
『秋穂が可愛いのは判るけど、夏海のことだって可愛がってあげなきゃ可哀相よ』


「そうゆうの、いろいろと。秋ちゃんも、聞いちゃったんだよね」