焼け木杭に火はつくか?

「こんなふうに、小さいメロンパンとアンパン、二個ずつ作ったんだけど。それがね、輪っかみたいに全部繋がっちゃってたんだって」
「そうね。そう、だったわ。不細工なリースみたいになってて、笑ったの」

英吾の言葉に夏海は目を細めて笑う。
懐かしい、大切な宝物を見つけたような顔で、夏海は静かに笑った。
繋がってしまったパンを見て、長谷を指さしながら笑い転げて。
でも、長谷のその気持ちが嬉しくて。
思わず、泣きだしそうだったあのときの気持が、夏海の中に蘇った。
夏海がほろ苦い思い出に浸っている傍らで、英吾は淡々と喋り続けていた。

「それが夏海さんのところにあって、それで、その男の人が言ってた彼女の正体が判ったって」

秋ちゃん、そう言っていた。
英吾のその言葉に我に返った夏海は、全くもうと言いながらため息を吐いた。

「秋穂ったら。言ってくれればよかったのに」

やや拗ねたような口調で、夏海は言葉を続ける。