「夏海がまっすぐに俺を見ていてくれる。それだけで、俺はいつでも、背筋伸ばして胸張っていることができたから」
いつでも、君が僕の勇気だったのだと、そんな長谷の思いをその言葉に夏海に伝えていた。
「パン作って食っていけるようになるまで、苦労かけるかもしれないし、辛抱させることもあるかもしれないけど、それまで待っていてくれるかって聞きたかった。それだけだったんだ。うまく言ってやれなくて、悪かった。傷つけたよな。ごめんな」
握った左の拳を、右の手の平で包み込むようにして重ね合わせていた夏海の手は、何かを堪えるように、かすかに震えていた。
色もなくすほどに、かたく、きつく握り合わされた手が、何かを堪えるように震えていた。
その手を、良太郎はただ静かに見つめるだけだった。
「なんで、ここでパン屋始めたのよ?」
その声は、震えまいと懸命に冷静を装っている声だった。
何があっても揺るがず怯まず真っ直ぐに立っている気高い人の初めて聞く声だった。
いつでも、君が僕の勇気だったのだと、そんな長谷の思いをその言葉に夏海に伝えていた。
「パン作って食っていけるようになるまで、苦労かけるかもしれないし、辛抱させることもあるかもしれないけど、それまで待っていてくれるかって聞きたかった。それだけだったんだ。うまく言ってやれなくて、悪かった。傷つけたよな。ごめんな」
握った左の拳を、右の手の平で包み込むようにして重ね合わせていた夏海の手は、何かを堪えるように、かすかに震えていた。
色もなくすほどに、かたく、きつく握り合わされた手が、何かを堪えるように震えていた。
その手を、良太郎はただ静かに見つめるだけだった。
「なんで、ここでパン屋始めたのよ?」
その声は、震えまいと懸命に冷静を装っている声だった。
何があっても揺るがず怯まず真っ直ぐに立っている気高い人の初めて聞く声だった。


