「元気そうで、よかった」

やや低い、穏やかな長谷のその声に、夏海の肩がピクリと揺れた。
一呼吸分の沈黙の後、長谷はまた口をゆるりと開いた。

「言い訳にしかならないけど、俺も順番と言い方間違えたんだ」

長谷は静かな声で、夏海に向かって語りかけ始めた。
その頬には愛しさと懐かしさが滲む柔らかな微笑みが浮かび、眼差しは限りなく優しかった。
聡と良太郎は口を閉ざして、そんな長谷と夏海を静かに見守り続けた。

「俺を支えて助けていくことが当然だなんて、言ったつもりなかった。仕事を辞めてほしかったわけでもない。夏海の仕事を、どうでもいい仕事だなんて思ったこともないよ」

息を詰めて長谷の言葉を聞いていた夏海は、静かに目を閉じた。
そんな夏海に、長谷の言葉は続いていった。

「一から勉強する覚悟で決めたこと、途中で投げ出して、いい加減な気持ちで半端に終らせたりしないように、夏海にずっと側で見ていてほしかった」

夏海の唇が微かに震える。