「六年、七年くらい前かな。夏海さん家の近く、二人で歩いていたでしょ」

夏海と長谷を交互に見ながら、自分が見たものに違いはないかと事実確認をする聡に、二人は驚きながらも頷いた。

「俺、反対側の歩道から二人のこと見かけて。なんか、夏海さん楽しそうだったから、彼氏かなあって。だから、長谷さんの店に行ったとき、すぐに夏海さんの元カレさんだって気づいたんですよ」
「あんたに、そんな記憶力があるっていうの?」

そんなこと、信じられないだけど。
そう言う夏海は、胡乱な目を聡に向けて「いい加減なこと言うと承知しないわよ」と言葉を続けた。
それに対して聡が反論するよりも先に、良太郎が口を開いた。
「いやいやいや。夏海さん。それがそうでもないですよ、この人。ものすっごい、びっくりの事実なんだけど、人の顔は覚えるの、ちゃんと」

いや、ホントに、ビックリな事実なんですけどねと、至って真面目な顔で告げる良太郎を、夏海は眉を潜めて眺めた。