「まあ、私だったら、結婚して幸せになったを姿わざわざ見せに行くなんて、そんなしょぼい復讐しないけどね。仕事バリバリやって、これが私が誇る私の仕事よって、例え男が何処にいたって、私のそんな生き様見せつけられるようになってやるけど。というか、いっそのこと、そういう女にしたら? この女も」

原稿を指先でトントンと叩き、忌々しそうに聡を見る夏海に、しかし、聡はどこ吹く風という顔で笑うだけだった。

「良太郎。やっぱ、おメー、天才だわ。すげーな。神だ、神」
なんのことだよと良太郎が喚き出すより先に、夏海が聡に食ってかかった。

「聡が話したんでしょ? あれこれ余計なことをいろいろと」
「何を。オイラは何も吹き込んでねーって。第一、よく知らねーし。あんたたちに何があったのかなんて」

心外だという顔で抗議する聡をじろりと睨みつけ、どうだかねと夏海はぼやいた。

「なんの話してだよっ」

一人、蚊帳の外に放り出され、自分が与り知らぬ話に訳も判らぬまま巻き込まれて振り回されるなど真っ平だ。
良太郎は説明しろと聡を見るが、肝心の聡はそれに何も答えようとなかった。