体育館では最後のリハーサルをしているのか“蛍の光”を弾くピアノの音が聞こえる。

「信じられないよねー、今日、卒業、だなんて…まだ昨日入学したばっかな気がするよー」


教室の窓から身を乗り出して、あたしがそう呟くと、隣で相良有馬がはは、と笑いつつ、


「まぁな、でも、いろいろあったよなあ…」

「相良、大学どこだっけ?確か県外だったよね?」

「そ、体育大、体育教師でも目指すよ」


ブルーのケータイをいじる手を止め、あたしを見た。相良は三年間あたしと同じクラスだった。陸上部のエースでよく表彰されてた覚えがある。

ていうか、かなり早く来たのに、相良のが先に登校してたなぁ。まだ教室には人が居なく、2人っきり。
なんだか気まずくてあたしは相良から目をそらし、まだ咲かない裸の桜の木を見た。


「いいよねー、相良は、ちゃんと未来がしっかりしててさー、あたしなんかレベルのあった大学に行って、また漠然と四年間勉強して就職だよ?」