『私は何も…私は、ただ…』

「ただ?」

優月の迫力に怖気づいたのか、男の声がだんだん小さくなっていく。

『そこの愚かな人間に、真実を話して聞かせたのです。』

「真実?」

『そう、真実です。この愚かな人間は、優月様の事を、友人だと言ったのです。
 ですから、お前は監視対象でしかない。』

その言葉に、優月は俯き何かを必死に我慢するように両手をギュッと握りしめた。

それと同時に、ビリビリとガラス窓が震え始める。


『身の程を知れ、と…』

「身の程?……それは、あなたの事ね。身の程を知りなさい!私はあなたの妻などにはなりません!!」

優月が叫んだと同時に、稲妻が走り

ガラス窓に叩きつけるように雨が降り出した。

そして顔を上げた優月の顔は、怒りに満ち、瞳は紅く光っていた。