「大丈夫か?」

燐が様子をうかがう様に、心配そうに覗き込み

蓮が優月の代りに背中を擦ってくれている。



「雪兎の気配が消えたと思ったら、こんな姑息な。」

今まで聞いたことがない、抑揚が無く低い声。

『優月様、何をお怒りになっているのです?こんな下等な人間、どうなってもいいでしょう?』


「あなたはココで何をしていたの?雪兎に何をしたの?」

見た事もない、冷酷な顔つき。

『分からない。なぜ、そのようにこんな人間を気に掛けるのです?
 そんな人間を構うよりも、私の妻になりませんか?
 あなたは、この人間界で新たな婚約者を探していると聞いたのです。』

無理やり明るく振舞っているように見える男。

「私はあなたに、ココで何をしていたのか、と聞いたんです。答えなさい!」


ピシッと音を立てて、図書室のガラス窓に亀裂が走る。

外の天気はいつの間にか雨雲が広がり、今にも雨が降りそうになっていた。