ある日の放課後――。

「雪兎ぉー、一緒に帰ろう。」

授業が終わると、いつもと同じように優月が声を掛けてくれる。


「あ、悪い。今日は図書館で調べたいものがあるんだ。」

誘いを断って、荷物を纏めると足早に教室を出て図書館に向かう。


二十歳まで生きられないと宣告を受けている僕にとって

勉強なんて無意味なものだと、ずっと思っていた。

けれど、優月に会って少し考えなおすようになった。


優月は、ヴァンパイアの事はあまり話してくれないけれど

毎晩見回りに出ている事や

親が勝手に決めた、見ず知らずの男と一年後に結婚させられる事。

そしてそれを阻止すべく、自分で決めた相手と結婚する為思案している

という事を冗談交じりで話してくれた事があった。