純血のヴァンパイア

僕は躊躇いもなく、右にある部屋の扉を開いた。

そこは、リビング。

白く大きなソファがテーブルを囲むようにある。

懐かしい。

僕は、ソファに座って部屋を見回す。

そう、ここに父が座っていて、あっちに母がいて紅茶を用意してて。

懐かしい。


「雪兎……」

不意に、優月が僕の手を握って優しく背中を擦ってくれた。

「泣いてもいいんだよ?」

「え?」

ビックリして、優月を振り返った時

頬に温かいものが一筋流れた。

それを優月が拭ってくれる。

「雪兎の気持ち、分かるから。」

優月の優しい言葉が、僕を包む。

それと同時に、堰(せき)を切ったように涙があふれ出て

嗚咽を漏らした。