「それに多分、人間を使われなくても父は何もしなかった、と思いますよ。」

雪兎の突然の発言に、父は息を飲んだ。

「何故だ?」

「簡単ですよ。叔父様、あなたを信じていたからです。」

「悠兎が私を・・・?」

はい、と笑顔を見せる。


「父は、ヴァンパイア界を捨てた身。
 端からそれに関わるつもりは無かったのでしょう。
 それに、忠告までしてくれたあなたが、動かない訳が無い。
 そう思っていたんです。現にあなたは水面下で動いていたのでしょう?」

「確かに、それは・・・。」


「あの日、城で発生した問題と言うのは――――
 私が拉致されてしまったのです。信じていた同胞に裏切られて―――」

静かに聞いていた母が声を出した。

「お母様が?」

「えぇ。私の事は構わず悠兎さんを助けに行って欲しいと言ったのですが
 この人は、私を助けてから行くと頑なに拒んだんです。」

少し困ったように、でも嬉しそうな顔をしていた。