血の契約――――


遠い年月と命を掛けた契約。

それを行うのは、大切な人を守る為。

それ以外に行う事は無い。


例えば、やむをえない事情で幼い我が子を守る為。


その子の身体から、ヴァンパイアの血を封印し

普通の人間として生活させるのだ。

ただ、その術を使った時

術者は、死ぬ。

灰になり、二度と生き返る事は無い。


人間となったその子は、術者が決めた相手の血を飲み

そして相手に、自らの血を吸って貰う事により

ヴァンパイアだった事の記憶と姿を取り戻すのだと言う。


それって、もしかして―――――

「雪兎も、そうだって言うの?」

「えぇ。」

母は、私の方を見ず

愁いを帯びた瞳で、月を見上げそう答えた。