「君の香りは、とても甘くて魅惑的だ。」

傷口から血が滲み出ている所為で

周りに血の匂いが充満し始める。

人間には分からないが、少しの匂いでもヴァンパイアは敏感だ。


静瑠は、血の匂いに誘われるように

ベッドに近づき、傷口を舐めようと唇と寄せる。



「く……優月に近づくな…」

小さくでもはっきりとした雪兎の声が聞こえた。

「雪兎?!」

「優月、大丈夫か?」

私の事なんていいから、自分の怪我とか心配しなさいよ。


「無粋な奴め…おい、静かにさせろ!」

そう言うと、再び黒尽くめの男達が雪兎に近づいていく。

「うあっ…くっ…あぁ!!」

叫び声とうめき声が響く。

「止めて、お願い。彼は人間なのよ。死んじゃう。」

「ゆ、づき……」

気を失ったのか声が聞こえなくなった。