「やめなさい!」

音を立てることなく、二匹の狼と共にそこへ現れる。

血の匂いがすると思ったら、こんなところで人間を襲ってるなんて…。


「邪魔をするな!小娘がっ」

チラッとこちらを見たけど、すぐに獲物へと顔を戻す。


彼女越しに見る、人間の顔は蒼白で今にも倒れそうな感じだ。

それに、この女から匂う血は1つだけじゃない。

この青年の前に何人か手に掛けたようだ。


『正気、じゃないな。』

漆黒の毛並みをした狼が、私の前にスッと出て蒼い眼を光らせ彼女を睨む。