太鞠さんは特に気にしてなく、私の腕を引っ張った。
「えっ?あの、ちょ、と」
「こんなとこ、いつまでもいたくないだろう?」
「あぁ、はい...すいません」
とは言っても、さっきの恐怖からか、足が動かない。
足が絡まりあっていて、きっとこの人の腕がなきゃ、倒れてしまう。
...だから?
だからこの人は、私の腕を掴んでるの?
体温が分かるほどに力強く、心を掴まれるほど強く。
視線を送れば、ニコリと微笑むその視線に、私は心が落ち着かない。
「君は...いや、梨莉は何故ここに?」
「え?り...り...」
いきなりの名前呼びに戸惑って戸惑って、またまたクラクラする脳内。
この人からの香水も、脳内をほどよく刺激してくる。
なんなの、この人...
「仕事です、仕事で来ました」
「ふぅーん。
何の仕事で来たのかな?」
「えっと...ファッション関係で..」
私の職業なんか、聞いてどうするんだろう。
ってか、この人からして、
興味があることなのかな?
「そうですか、
なんだか楽しそうな仕事ですね」
「は、はい!
楽しいですよ、人が笑顔になっていくんですから」

